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労働法の基礎知識

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賃金債権の消滅時効

賃金債権の消滅時効

労働基準法においては、賃金の消滅時効について、「この法律の規定による賃金(退職金を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。」と規定されています(労基法115条)


なお、使用者には賃金台帳などを作成して3年間保存する義務があります。(労基法108条、109条)


労基法第115条の適用を受ける請求権【消滅時効にかかる年数】

  1. 賃金請求権【2年】
  2. 労基法11条によれば,賃金とは,「賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものいう」とされています。
    この「賃金」には,月給,週給,日給など定期的に支払われる賃金はもとより,通貨以外のもので支払われるもの,時間外・休日労働に対する割増賃金,年次有給休暇期間中の賃金等も含まれます。
  3. 退職手当請求権【5年】
  4. 労基法第115条のいう「退職金」は、就業規則、労働協約、労働契約等によって、それを支給すること及び支給基準が明確に定められているものをいいます。
    この退職金は労働の対価として賃金に該当し(使用者の裁量に委ねられた恩恵的給付ではない)、当然に会社が支払い義務を負うものです。
  5. その他の請求権【2年】
  6. ◆災害補償請求権
    ◆金銭給付請求権
    ◆解雇予告手当請求権
    ◆年次有給休暇
    ◆退職時証明、物品の返還
    ◆帰郷旅費請求権 など

労基法第115条の適用を受けない請求権

◆安全配慮義務に基づく損害賠償請求権
◆セクハラによる被害に対する損害賠償請求権 など
これらは,不法行為による構成で請求される場合には3年間,債務不履行による構成で請求される場合には10年間の消滅時効期間となります。


時効の起算点と中断

時効の起算点は一般的に、「具体的に権利が発生したとき」つまり各「賃金の支払い日」となります。
しかし、この時効の進行中に一定の事実が生じた時には、それまで経過した時効期間がリセットされる「時効の中断」となります。

中断事由は、労働基準法には定めがありませんが、民法により、①請求、②差押、③承認④催告などが定められています。
①②③いずれかの事実があれば時効は中断し、中断事由が終了したときから、改めて新たに時効期間が進行するということです。


④の催告とは、裁判外での請求のことを言いますが、請求したことの証明をするためには、内容証明による文書で通知する必要があります。
内容証明によって催告した場合には、時効の完成を6ヶ月遅らせることが出来ます。 あくまで「暫定的時効中断」であり、この6ヶ月が経過する前に裁判上の請求をしないと、遡って時効が完成となります。




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